この記事は、「臨床研究を始めてみたいけれど、どうやって始めればいいのかわからない」「教えてくれる人がいない」と感じている方に向けて書いています。
臨床研究をスタートするにあたって、まず押さえておきたい必須の3項目をご紹介します。
結論:臨床研究を始めるときの3つの必須ポイント
- データ収集項目を決める
- データ収集のフローを決める
- 仲間を作る
この3点が、臨床研究をスタートする際にとても重要です。では、なぜこの3点が大切なのかを、順に説明していきます。
研究を始めるハードルを下げるために
臨床研究に関する書籍やガイドラインを読むと、研究の種類やクリニカルクエスチョン、統計解析などが体系的に解説されています。しかし、研究経験が少ないと、それらを読んでもなかなかイメージが湧かないのが正直なところではないでしょうか。
だからこそ、最初は「とにかくやってみる」ことが大事だと思います。
最初から完璧な研究を目指すのではなく、実際に手を動かしてみる。その経験こそが、次につながる学びになります。
そのために必要なのが、前述した3つのステップです。
1. データ収集項目を決める
臨床研究を始めるには、まず「どんなデータを取るか」を明確にする必要があります。研究対象者は、多くの場合、日常的に関わっている患者さんになります。
たとえば、脳卒中の患者さんを診ているのであれば、次のような評価項目が考えられます。
- 脳画像
- 麻痺の程度
- 高次脳機能障害 など
これらは日常業務でルーチンとして評価している項目かもしれません。それをまず、研究における測定項目の候補としましょう。
さらに、もし興味がある項目(例:栄養状態、歩行能力など)があれば、それも加えてOKです。
2. データ収集のフローを決める
次に重要なのは、「いつ、どのデータを取るか」です。
たとえば、脳卒中の患者さんにおいて、以下のタイミングのデータを収集することで研究の流れが明確になります。
- 入院時
- リハビリ開始時(リハ職種)
- 入棟時(病棟スタッフ)
- 退院時
これらのタイミングでどの評価項目を記録するかをあらかじめ決めておくことが大切です。
例:
患者Aさんは「入院時」と「退院時」に歩行速度を評価したが、
患者Bさんは「1ヶ月後」と「退院時」にしか評価していなかった場合、
両者のデータを同じ分析に使うのは難しくなります。
こういった事態を避けるためにも、「測定項目」と「測定タイミング」を明確にしておく必要があります。
3. 仲間を作る
臨床研究は1人でも始められますが、長く続けるにはやはり仲間の存在が大きな力になります。
- 一緒に評価を分担できる
- データ収集のモチベーションが保てる
- 疑問やアイデアを共有し合える
- 頭の整理や新たな発想にもつながる
臨床現場では日々の業務に追われがちですが、1人でも2人でも協力者がいれば、研究の負担は大きく軽減されます。
まずは「やってみる」から始めよう
多くの教科書では、臨床疑問を明確にし、それに基づいて研究計画を立て、計画通りにデータ収集を行う…という流れが正当な手順として紹介されています。もちろん、これは理想的な方法です。
しかし、初学者がその通りにやろうとすると、あまりの労力に圧倒されて、結局何もできずに終わってしまうことも少なくありません。
ですので、まずは自分の臨床経験の中で「これは重要そう」と感じるデータを選び、そのデータを「いつ取るか」を決めて、少しずつ集め始めてみましょう。
そうしていく中で、自分の診ている患者さんの傾向や変化を“データ”として捉えることができるようになり、新たな疑問や研究のアイデアが湧いてくるはずです。その段階で改めて、研究の清書を読んで理解を深めるのも良いでしょう。
おわりに
この記事では、これまで大学病院、総合病院、クリニックで臨床研究に携わってきた筆者の経験をもとに、臨床研究を始める際に大切な3つのポイントをお伝えしました。
もちろん、他にも大切なことはたくさんあります。しかし、最初からすべてを完璧にこなす必要はありません。
この記事を読んで、「難しいことはひとまず置いておいて、とりあえず始めてみよう」と思っていただけたら嬉しいです。
コメント